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【受賞作品発表】開業40周年記念 『ホテルの思い出』エッセイコンテスト

2018年10月31日に発表されました受賞作品を公開いたします。
グランプリ作品は朗読による動画と合わせてご覧ください。
たくさんのご応募誠にありがとうございました。

※ご応募いただいた作品のご返却はいたしかねますのでご了承ください。

グランプリ

島原市・福島 洋子様
「バリ~番外編の思い出」

《明朝○時、ロビーに来てください》
 部屋のドアに挟まれていたのは、たどたどしい英語で書かれたメモ。
 十五年前の秋、バリ島を訪れた。花と緑であふれたリゾートホテル。色鮮やかな制服を着たスタッフはみな親切で感じがよかったが、とくに目をひいたのはひとりの少年。
 年のころは十二、三歳くらい。正規の従業員ではなく、下働きなのだろう。食堂やロビーで配膳や荷物運びなど、あらゆる雑用をこなしていた。小柄でやせっぽっち。あどけない笑顔で、懸命に働く姿が印象的だった。
「三日間、お世話をしてくれてありがとう」
 最後の日の夕方、私はホテルの廊下で少年をひきとめた。手渡した和柄の巾着袋には、使い残したバリのお金と日本の駄菓子。
「サ、サンキュー!」
 アーモンドのような瞳を細め、嬉しそうに巾着袋を抱きしめた少年。冒頭のメモを見つけたのは、その夜だった。
翌朝ロビーへ降りると、まだ暗い玄関で少年が待っていた。
「夕べのお礼。いいところ、案内する」
 しのび足で連れて行かれたのは、ホテルの裏手にあるプライベートビーチ。
「ここ、観光客ダメね。でもお客様とくべつ。最高のバリの朝日、見せてあげる」
 白い砂浜に敷かれたよれよれのシート。私を座らせ、彼もちょこんとひざをかかえた。
 優しく打ち寄せる波と、ほほをなでる潮風。
 静寂を破り、時折海鳥が鳴く。
 目が合うと、少年はにっこりほほえみ、彼方の水平線を指差した。
 するとーー東の空がバラ色に染まり、巨大な朝日が顔をのぞかせた。一日の、いや世界の始まりだといわんばかりに、空と海を赤みがかった強烈なオレンジ色に輝かせて......。
 圧倒され、涙ぐんだ私。その背をさすってくれた少年の瞳も、誇らしげに輝いていた。
 バリのホテルーー素敵な番外編の思い出だ。

審査委員長・瀧澤信秋氏より

文章力に加えストーリー性の高さも素晴らしい。

審査委員会より

旅先での心温まるエピソードが、リゾートの美しい情景と共に描かれており、読後の爽快感が心地よい。ホテルスタッフとのふれあいから、思いがけない非日常の瞬間との巡り会わせまでがテンポ良く表現されていました。

準グランプリ

阪南市・山田 幸夫様
「五十年目の約束」

 四十年前の一九七八年四月。私と妻は結婚と同時に、住み慣れた大阪から千葉佐倉市にやってきた。知人もいない初めての地だったが、教員として出発する希望に溢れていた。着任した佐倉市の小学校は、新興住宅が立ち並ぶ人口急増地の中にある。児童、教員数の多さに圧倒されたが、校区から離れると、緩やかな丘陵地に抱かれた落花生畑が拡がっていた。
 一学期を終え、迎えた初めての夏休み。
 当地へ来てから既に四か月を経ていたが、私と妻の新しい生活を祝う二人だけの会をすることにした。新任教員の収入で生活は楽ではなかったが、開業したばかりの『ホテル日航成田』を予約した。
 ホテルフロントで手続きをしていると、隣に、私たちと同世代の男女がいた。耳に届いた声で、すぐ大阪弁だと分かった。反射的に顔を向けると、相手の男性も私の方を見た。
「大阪の方ですか」と、確認するお互いの声は重なった。どちらともなく誘いの声をかけて、夕食を共にした。旧知の仲のように話は弾んだ。彼ら二人も夫婦。開港間もない空港で働くため、大阪からやってきた、と言った。
 それから五年間、私たちは家族ぐるみの付き合いをしたが、私の家族は大阪へ戻ることになる。引っ越しの日、トラックが見えなくなるまで手を振ってくれていた。会う機会はないままだったが、年賀状のやりとりだけは欠かさず続いた。
 ――そして今年の夏、あの出会いから四十年、私たちは再会した。彼ら夫婦揃って空港で迎えてくれた。予約しているというホテルに導かれるまま入ると、そこは『ホテル日航成田』。その時、ホテル開業四十周年と知り驚いたが、偶然とは思えない良縁を私は喜び、「粋な計らいだな」と言うと、彼は「偶然だよ」と微笑む。別れ際、十年後の再会五十周年を祝う会を約束した。その時の私は八十歳だが、約束を叶える目標ができたことを喜んでいる。

審査委員長・瀧澤信秋氏より

ホテルのヒューマンを体感する貴重な体験が綴られている。

審査委員会より

当ホテルが開業した年の出会い、そして今年、四十年目の再会に開業40周年の当ホテルをご利用いただけたことに不思議な縁を感じます。五十年目の約束も楽しみです。

北相馬郡・岩崎 朱美様
「いいね」

 巷では[インスタ映え]が流行している。美しい景色や食べ物など興味を唆られる。自分の感性に共感し「いいね」をもらうのは、嬉しい事だろう。
 二十年以上前、夫と四歳の息子と九州三泊四日の旅をした。三泊目の夕食後、息子の大切な物がない事に気付いた。それは生まれた時から、おくるみにしていたボロボロの青と黄色のバスタオルだった。「一緒に連れて行く」とリックに詰めてきた。前泊のホテルに問い合わせると預かってくれていた。すぐさま、ほろ酔いの夫は取りに行くと言った。タクシーで往復二時間半かかり、達成感に満ちたドヤ顔の夫に抱えられ、面映ゆい笑顔の息子の元に戻った。くたびれたバスタオルは透明な袋に綺麗にたたまれラッピングされていた。何故かふんわりと青と黄色が色濃く見えた。ともすれば捨てられても仕方がない姿の物をキチンと保管してくれたホテルの心遣いが有り難かった。そのホテルをチェックアウトする前に最上階のラウンジでコーヒーを飲んだ。息子はチョコレートケーキを食べた。何も言わずあっと言う間に食べてしまった。その様子からとても美味しのだとわかった。滅多にしない、おかわりをして嬉しそうに笑った。白い清潔なテーブルクロスに白い小ぶりな丸い皿にのった三角のシンプルなチョコレートケーキだった。
 何故だろう。今でもくっきりと覚えているのは、本当は色褪せていたバスタオルの青と黄色の鮮やかな色と白いテーブルクロスとチョコレートケーキの色なのだ。ひとつのアクシデントへのホテルの心遣いと誠実な味が思い出を残しくれたのだ。私の心の中だけに映し出された色鮮やかな記憶の写真は、素敵な「いいね」だ。今では一人暮らしの息子にその旅の思い出を尋ねた。「たしか…ホテルのチョコレートケーキが美味かった。」と返信がきた。私の心の「いいね」が一つ増えた。

審査委員長・瀧澤信秋氏より

時間軸で読ませる表現力とシーンの切り取り方が秀逸。

審査委員会より

二十年以上前の出来事にもかかわらず、当時幼かったお子様の記憶にも残る、ホテルのホスピタリティに感動しました。

入選

石巻市・船山 直子様 「馴染まない心地良さ」

 半世紀以上生きた自分にとっても、豪華なホテルは今なお、緊張の場である。煌びやかな内装、慇懃なホテルマン、厳かな雰囲気。日常の中にそんな要素のない者にとっては、芝居がかっているようでなかなか興味深い。
 なので、ごくたまに利用する際は、かなり張り切ってしまう。着る服、身に着けるもの、振舞い。できれば身内は傍にいない方がいい。猫をかぶっていることがバレるから。それでも、一歩ふかふかの絨毯を踏めば、なんだか自分がみすぼらしく感じられたりする。少々クールな対応を受けると、やはり時計と靴が肝心なのかなと思ったりもする。
 ずっと若い頃は、気取るだけで精一杯で、高級感を味わえるような余裕はなかった。都内のホテルのレストランで友人と食事をしていた時のこと。年若いウェイターが、テーブルに皿を運んで来るたびに、丁寧に料理の説明をしてくれた。聞いたことのないカタカナばかりで、さっぱり頭に入らない。友人も同じだったのか。メインディッシュの到着の際、にこやかに口を開いた。
「せっかくなのですが、僕も彼女も理解不能なので結構ですよ」
途端、今まで涼しい顔をしていたウェイターが、ふっと柔らかい顔になった。
「かしこまりました。このために頑張って覚えたので残念ですけど・・」
私たちは顔を見合わせて小さく笑い合った。私と友人と、ウェイターの三人で。
 ホテルという華やかな舞台では御法度のことだったかもしれない。でも、温かい出来事だった。いたずらを共有し合ったような。
 しっくりと馴染んではいないけれども、その中にある、小さな気の抜けたところの心地良さ。それが私にとっての味わいある魅力だ。気取った顔をしながら、少し斜め視線からホテルの世界を楽しみつづけたいと思う。

審査委員長・瀧澤信秋氏より

ホテルライフがゲストの心が入り込む描写が秀逸。

東近江市・高田 智子様 「真のホスピタリティ」

 広々としたロビー、高い天井にまばゆいシャンデリア、人々の足音を吸い取るふかふかの厚いじゅうたん。花瓶に盛られた花は今しがた切られたばかりのように匂い立っている。一歩足を踏み入れると、そこは別世界。大学受験を翌日に控え、地方から上京した18歳の私に、両親は奮発してよいホテルを取ってくれた。初の一人でのホテルステイの緊張を、受付スタッフの親しみのこもった笑顔が和らげてくれた。スタンドライトを事前に注文していたため、私が受験生だと分かっていてくれたのだろう、「頑張ってください」と合格御守を手渡してくれた。早めにチェックインした私は、部屋で最後の見直しにかかる。どこまでも静かで清潔で、勉強は大いにはかどった。夜半、目が冴えてロビーをうろうろしていると、受付スタッフと目が合った。「眠れなくて」と言うと、「アイスノンをお使いになられますか。お勉強で疲れた頭をクールダウンされると驚くほどよくお休みになれますよ」とのこと。そうしてみると心地よく、すぐに熟睡できた。翌朝ルームサービスを頼むと、自分と同い年くらいの女性が、香ばしいトーストや半月のように美しい黄色のオムレツを運んでくれた。きっとホテルに就職して間がないのだろう。動作が初々しい。こんなに朝早く、こちらはまだパジャマで寝ぼけ眼なのに、居ずまいを正して働いている若者がいる。彼女の笑みは朝日のようにすがすがしく、私も心が洗われ、今日一日頑張ろうと背筋が伸びる思いだった。食べ終えてドアの外に出しておいたルームサービスのワゴンが、チェックアウト時には既に跡形もなく片付けられていて、隅々まで気配りが行き届いていることにも感激した。マニュアルだけではない真のホスピタリティが、私に安らぎと活力を与えてくれた。それは、ホテルスタッフのお客様一人一人への想像力の賜物なのだろう。
 PS.大学には無事合格し、今ではそのホテルは私の定宿だ。

審査委員長・瀧澤信秋氏より

人生の大切なシーンとホテルを重ね合わせている。

岐阜市・坊垣 妙泉様 「おしろみたいなホテル」

 わたしはぎふけんにすんでいますが広島けんにいったことがあります。
 そのときにホテルにいったことがあります。
 そのホテルは広島リゾートホテルというホテルです。
 わたしはそのホテルはすごくよるのけしきやあさごはんをたべるところのシャンデリアがとってもきれいであさごはんもすごくおいしかったです。オムレツやジュースやサラダがとくにおいしかったです。
 ホテルにはテレビもあり大きくてみやすかったです。
 ホテルはカードであけるところでした。
 すごくきれいでここにすみたいぐらいでした。
 私はシャンデリアをみたときここはおしろの中のようでした。
 わたしはおしろの中にいたらすごく大きなこえで
 「えー。」
といいます。
 でもホテルなので一あんししました。
 わたしはとおくから見たときおみせとホテルがつながっているのがわかりました。
 わたしはすごくびっくりしました。
 それにこんなすごいホテルはみたことがありませんでした。
 ホテルの中で一ばんいいホテルかもしれません。

(七歳)

審査委員長・瀧澤信秋氏より

ホテルに感動する純粋な子どもの目線が新鮮。

足立区・瀧川 奈々様 「日常のような非日常」

 昨年、初めてホテルに泊まるためにホテルを予約した。今までは、観光やイベントが本来の目的であり、日帰りで帰れないからという理由でホテルをとっていた。けれども、昨年はそうではない。観光もイベントもなく、ホテルに泊まりたいから泊まったのだ。私はその体験の中で、ささやかだが非常に多くの気づきをすることができ、今でも思い出の一泊となっている。
 ところで、いつも同じような日常を送っていると、ふとまったく違う環境に身を置きたくなることは誰にでもあるだろう。私は、昨年そんな気持ちに駆られ、非日常を求めて何処かで気分転換をしようと考えた。そこでホテルに宿泊することに決めたのだ。
 まず、ホテルに着いたときに言われたスタッフの方の言葉がとても印象的だった。宿泊客の皆に綺麗な笑顔で「お待ちしておりました」と迎え入れてくれたのだ。日常でも非日常でも自分の帰りを待ってくれる人いるのはなんとも嬉しいものである。
 部屋につけば、清潔なお部屋に綺麗に整えられたベッド、最低限の家具や電気製品も揃っている。夜と朝には美味しい食事が提供される。暇になったら様々な娯楽が館内にある。
 普段、私達は家に居ても「洗濯物を乾かさなきゃ」や「ご飯つくる時間だ」と様々な仕事に追われて過ごしている。だが、ホテルはそのようなストレスを感じさせない場所だ。非日常というと、日常からかけ離れたものを想像してしまうが、ホテルはそうではない。日常のようだけれども、日常で感じる切迫感はない。非日常だけれども、自宅のように落ち着いて過ごせる。私にとって昨年のホテルでの一泊は日常のような非日常だったのだ。観光やイベントがなくともホテルのみの利用、それは充分に価値あるものである。

審査委員長・瀧澤信秋氏より

日常のホテルライフの非日常が上手に切り取られている。

成田市・小林 敦子様 「ホテルの思い出」

 ホテル日航成田40周年という記事を目にして、本当に久しぶりに自分達の結婚式を思い出しました。27年前のあの日、新婦の私は、披露宴が終了して金屏風の前に立ち、出席して下さったお客様一人一人にご挨拶しました。とりわけ思い浮かぶのは、今はもう他界してしまい会うことが出来なくなってしまった方々です。
みんな笑顔、懐かしい笑顔です。
実は今、私が嫁いだ小さな文具店は時代の波にのまれて大変な苦戦を強いられています。世の中はボタン一つで欲しい物が手に入ります。より早く、より安く。
私達夫婦はもがき苦しみ、うちが経営するような商店の役割はもはやこれまでかと完全に立ち止まっていました。
そんな時にたまたま雑誌でホテル日航成田の記事を読んだのです。
あの日、笑顔で祝福の言葉を下さった人生の先輩方はみな強くて元気でひたむきでした。色々な事がありましたがいつも前向きでした。そしてみな優しい人達でした。それなのに現在の私はどうでしょう。年齢は近づきましたが後ろばかり向いています。若者を引っ張る器量もありません。さぞ皆がっかりしている事でしょう。義父だったら、どうするかな?
実父だったら叱られるかな?
会社の上司だったらアイデアくれるかな大好きだった親戚のおばさんだったら励ましてくれるかな?...
そんな風に想いを巡らせていたら、自分にもまだ何か出来る事があるはずだ思ったのです。もう少し頑張ってみようと思えたのです。ありがとうございます。
これからは時々ホテルにうかがうことにします。そしてあの日の笑顔の思い出に耳を澄ませます。良いアドバイスをもらえるかもしれません。

審査委員長・瀧澤信秋氏より

ホテル日航成田での思い出が読みやすく書かれている。

審査委員長・瀧澤信秋氏 総評

審査委員長・瀧澤信秋氏

ホテルにまつわるエッセイということで、旅の体験や想いなどが綴られた原稿が多く楽しく拝読した。

ホテルといえば非日常空間である。私は日々仕事としてホテルと関わっているが、ゲストから見た卑近なホテルライフが応募者それぞれの目線で書かれており、ハッとさせられるシーンも多くあった。

時に旅は人生をも変える瞬間がある。旅と人生の道程を重ね合わせつつ、軽妙な筆致で表現されていることに感心した原稿も。

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